催眠療法

催眠療法は効果的な心理面接技法です。こころの相談室 り・らあくでは、心理療法としての催眠療法を専門機関・医師との連携で行っています。

催眠療法は、〝科学的に実証可能な根拠のある治療手段〟であり、効果的な心理面接技法でもあります。催眠療法の効果研究が積極的に進められたことによって、機能性消化管障害(例えば、過敏性腸症候群)や疼痛性障害(例えば、慢性疼痛)には、認知行動療法とともに催眠療法にも 高いエビデンスがあると認められてきています。

近年、世界的には催眠療法の効果が認められて各国で盛んに臨床適用されています。
例えば、フランスでは救急隊員が事故等による激しい痛みの緩和のために催眠を活用したり、イギリスでは催眠を併用することによって無痛分娩を効果的に行ったりしています。また、肥満や禁煙治療などにも催眠は効果的に活用されています。
私は日本臨床催眠学会と日本催眠医学心理学会の2つの学会の公認の指導者資格を有しており、これまで大学や医療機関で医師との連携の元、様々な症例を扱ってきました。今年も国際学会(世界催眠学会)のプロジェクト研究での話題提供を行い、諸外国の催眠臨床家・催眠研究者との交流を 通じ、知識、技術を高める努力を続けています。

催眠は「心理療法の打ち出の小槌」

催眠は心理療法の「打ち出の小槌」と言われるくらい,これまで多くの心理療法を生み出してきています。J・A・シャルコーの弟子であったS・フロイトは,催眠療法中におけるクライエントのカタルシス経験を基に自由連想法を編み出し精神分析の体系をまとめています。また、J・H・シュルツは,催眠によるリラクセーション効果を合理的に組み立てられた生理学的訓練法として自律訓練法を開発しました。

近年においては,M・H・エリクソンの催眠療法のコミュニケーション的側面の活用を通して家族療法の開発や戦略的アプローチの工夫が積極的に行われており、効果的な心理療法技法としていろいろな場面において活用されています。わが国においては、成瀬が脳性まひ児への催眠の適用を通してわが国独自の画期的な心理療法としての臨床動作法を開発しています。

催眠療法に対する2つの誤解
…(1)ショー催眠

催眠療法に対する一般的なイメージには2つの大きな誤解があります。
一つは、マジックショーなどで見られるような、催眠にかけられている間に自分の意思と異なることを勝手にさせされてしまうような操作的・支配的なイメージによる誤解です。いわゆるテレビ番組などで余興のようにして行われるショ―催眠によって作られる間違った理解です。臨床の現場では少なくともそういった催眠は使 いません。
ただ、観念運動といって、腕浮揚暗示によって挙上した手が自分の意思で動かせなくなるといったような1種のトランス状態(カタレプシー)を必要に応じて作る場合があり、その状態を使って医療的、臨床的働きかけをするということを行うことがあります。これは催眠療法におけるひとつの誘導技法ではありますが、こ れが絶対ではありません。

催眠療法に対する2つの誤解
…(2)万能感

もう一つの誤解は、催眠を万能視して催眠によって何でも自分の思い通りにできてしまうとか、病気もいっぺんに治ってしまうとかいった過剰な期待を催眠に持ってしまうという誤解です。催眠療法は魔法ではないので、一発ですべて治るというものではありません。
確かに、催眠によって創造性の開発が促進されたり、自己治癒力が促されたりすることはありますが、それは催眠者によって一方的に作り出されたものではなく、もともとその人が潜在的に持っていた力が催眠者との共感的な関係性の中での協働で主体的に導き出された結果によるものなのです。
催眠療法はあくまでも、きちんとした手続きをとった医学的な根拠がある学術的なものです。それを正しく実行するためには催眠者の人格が重要であり、臨床心理学や医学の基礎知識を持った上で扱うべき療法です。

効果的な催眠療法の要素

催眠療法は相談者の問題や症状に合わせて催眠誘導技法や治療暗示の工夫を行っています。相談者の問題や症状によっては、古典的・伝統的な催眠療法の考えに基づいて直接症状除去を目的として直接暗示を行ったり、行動療法・認知行動療法と併用するために合目的的に暗示を段階的に組み合わせたりして行ったりします。
古典的・伝統的な催眠療法の考え方では、催眠状態(トランス:変性意識状態)の中で、直接暗示によって症状を改善させたり、行動変容を起こさせたり、神経症的な習癖の改善を目指したりしていました。そして、それなりの効果も挙げてきていました。しかし、こうした考え方による催眠療法は、どうしても治療者主導の一方向的なものとなってしまいがちで、クライエントの主体性がなかなか発揮されないことが多いものです。

そうしたことを踏まえて、私は催眠療法における治療者―患者関係(セラピスト-クライエント関係)の重要性について研究を行い、それが催眠療法の治癒機制を考えるうえでいかに重要な要素であるかを論文としてまとめました。もう15年も前になりますが、「催眠療法における“共感性”に関する一考察」(催眠学研究第16巻第3号 2003)という論文です。その中では、効果的な催眠療法がおこなわれた際のトランス空間は、「治療者(セラピスト)ー患者(クライエント)間の共感性に基づく共有空間」であり、催眠誘導を行う中での両者の協働作業によって患者(クライエント)の主体性が引き出されてきて、患者(クライエント)自らが解決を行うようになるのだということを述べました。
難しい説明になってしまいましたので、この点での考え方に興味をお持ちの方は以下の拙著をご覧になって下さい。

・「催眠トランス空間論と心理療法-セラピストの職人技-」(遠見書房,2017)
・「無意識に届くコミュニケーション・ツールを使う-催眠とイメージの心理臨床」(遠見書房,2018)

催眠療法の効果が期待できる状態像

催眠療法の効果が期待できる状態像

・機能性消化管障害(例えば、過敏性腸症候群など)、疼痛性障害(例えば、慢性疼痛など)
・神経症的習癖(例えば、チック症など)
・社交不安性障害(例えば、不安性障害全般,パニック障害,外出不安,心因性の吃音など)
・解離性障害(解離性健忘,解離性同一性障害など)
・強迫性障害(不潔恐怖,確認強迫など)
・ジストニア、硬直、震顫症状(ふるえ)など ・心因性多汗症

2. 自己啓発に関するもの

・創造性開発
・自我強化
・レジリエンス

催眠療法を受ける前に

こころの相談室り・らあくでは、心理療法が適応できる人を条件にどんな方でも催眠療法の適用を受け入れていますが、医療系のケースでは、原則、医師や専門機関からの紹介状や情報提供書が必要です。主治医の先生と連携し必要に応じて投薬と並行しながら、社会適応に向けて催眠療法を併用する形が理想です。また、相談者の同意のうえで、催眠療法中は陪席者が同席するか録音を撮らせて頂くかなど客観的なデータを残すようにしています。信頼関係を損なわないための措置です。

※ただし、紹介状・情報提供書が得られない場合などは、来院前にご相談ください。ご要望があれば催眠療法の適用をともに考えてみますのでお申し付け下さい。